金属分野の特許には、金属材料、金属材料の製造プロセス(精錬、元素の添加方法等を含む)・製造装置、分析方法・製造装置等があります。

金属は、一般的に、添加金属の組み合わせ及び量によって、その特性が大きく変化します。このため、金属材料の特許においては、添加金属の組み合わせ及び量は、非常に重要なポイントになります。一方で、添加金属の組み合わせ及び量に関しては、既に数多くの先行文献が存在しています。また、製造プロセスについても、精錬の条件、元素の添加方法及びタイミングに関して、既に数多くの先行文献が存在しています。

以上のことから、近年では、金属分野の特許を取得するのは難しくなりつつあります。こうした状況の中、金属分野の発明に基づいて“強い特許”を取得するにはどうすればよいか。皆様がいつも考えておられることだと思います。

ここで、“強い特許”とは何かを考えてみましょう。
私たちは、“強い特許”とは、ひとことでいえば、“事業を守り育てる “ことに貢献する特許であると考えています。
競合他社の参入をしっかり阻止できる特許。
競合他社がどうしても使わざるを得ない特許。
競合他社から権利行使されたときに対抗できる特許。
このような事業を守り育てることに貢献する特許が“強い特許”と考えています。

開発した金属材料や製造プロセスを守る特許も必要です。しかし、開発した金属材料や製造プロセスだけを守り、他社が使わない特許を取得しても、事業への貢献はあまり大きいとはいえません。特許権はあくまで“排他権”です。他社の実施を阻み参入障壁を築くツールとして利用するべきものです。したがって、目指すべき特許は、自社でしか製造しない製品、自社しか実施しないプロセスを守るものではありません。他社が実施している、あるいは、他社が実施したい製品やプロセスをカバーする特許の取得を目指すべきです。

こうした特許は決して簡単に取得できるものではありません。その金属材料の用途、添加元素の種類及び濃度、結晶構造、製造プロセスなどに深く踏み込んだ上で進歩性のポイントを見出し、必要な排他権の範囲を見定めた上で権利化を行うことが重要となります。

そのためには、金属材料分野の実務力、組成物発明の取り扱いに関する実務力を駆使しながら、質の高い特許出願を行うことが大切です。

本ページでは、こうした質の高い特許出願を行うためのヒントを提示していきます。
(日常の業務が忙しく、申し訳ありませんが、更新は不定期になります。)

金属材料の出願の多くは数値限定発明やパラメータ発明になります。数値限定発明・パラメータ発明に基づいて強い権利を手に入れるためには、数値限定・パラメータ発明特有の実務力が必要です。明細書や意見書の巧拙によって、取れる権利が取れなかったり、本来広く取れるはずの権利が狭くなってしまったりすることがあります。

我々は、数値限定・パラメータ発明に基づいて強力な権利を取得するための多くのノウハウを有しています。この種の発明の特許出願戦略については、このページとは別に、以下のページを作ってみました。こちらも参考になさってください。

数値限定・パラメータ発明、組成物発明の特許出願戦略
金属分野チームリーダー 弁理士 天城 聡